ISO9001 品質マネジメントシステム
I.広がるISO
商取引のグローバル化 → 顧客満足の追求 → 顧客満足をベースとした事業運用
商取引の急速なグローバル化に伴い、取引先の品質保証能力が一定レベル以上であることを推し量る基準として、ISO 9001の認証が用いられてきました。ISO 9001は、国際標準化機構(ISO)が世界的に統一された産業上の管理標準として制定した、企業の自主管理を基本にしたシステムであり、顧客に対する自己管理責任を約束するものです。
日本では、当初は主にヨーロッパに輸出する企業が必要に迫られて取得していましたが、現在では輸出を理由にISOを取得する企業は減り、むしろISOを自社の「管理システム」の一手段と捉え、体質強化を目標とする企業が増えています。
ISO 9001は、1994年に制定された後、数回の改定を経て、2015年版の改訂で顧客満足を目指す継続的改善のためのシステムへと成長しました。2015年版の改訂では、リスクおよび機会への取り組みに関する要求事項が強化され、総合的に事業運用をより確実に進めるためのシステムへと進化しました。
ISO9001は製品の品質を管理する仕組みの規格 ≠ 製品の規格
ISO 9001は、製品・サービスの品質の良否を決める規格ではありません。この規格は、顧客が求める一定の品質の製品・サービスが常に提供されるような仕組みを作り、顧客と約束したことを果たすことにより顧客の満足を得るための規格です。
この規格を取り入れることにより、顧客要求を満たす製品・サービスを提供するための品質管理の仕組みとともに、それを継続的に改善し、顧客満足を向上させる事業運営が可能なマネジメントシステムを作ることができます。
取得企業の広がり → 製造業からサービス業へ
日本でのISO 9001の取得件数は約5万件です。当初は製造業、建設業、電気関係企業の取得が急増しましたが、近年はサービス業の取得が急増し、取得企業の比率が変化しつつあります。流通業、病院、地方公共団体など、業種に関係なくISOの取得を目指す企業・団体が増えており、2015年度版の規格では、従来よりもサービス業の取り組みを意識した表現が用いられています。
企業経営へのISO9001のメリット
- 企業が、顧客の満足する均一な品質を常に提供できること(品質保証能力)を証明し、取引先、顧客から信頼感を得る。
- 企業を取り囲む様々な状況からの影響を未然に防ぎながら、1を目的とした事業運用(経営)を行うことができる。
Ⅱ.ISO9001の内容
標準化 → 文書化 → 実行 → 記録
- やり方を決め、実行し、記録する
ISO 9001の規格が求めているのは、「ISO 9001が定めた管理の仕組みに対して、具体的にどのように実施するかを決めて行いなさい」ということです。企業活動において、受注から製品製造、出荷までの手順やルールは、大企業は大企業なりに、中小企業は中小企業なりに「自分たちのやり方」を決定しなければなりません<標準化>。やり方を決めたら、それを統一するために、紙に書いて見えるようにすることが重要です<文書化>。次に、決めたやり方を実行し、その結果を記録します<記録>。
計画Plan →実行Do →チェックCheck →処置・改善Act
- やり方を定め、その通り実行し、出来ているかチェックし、改善する。
業務のやり方を決め(Plan)、その通り実施し(Do)、決められた通り、計画した通りにできたか、顧客の満足を得られたかをチェックし(Check)、できていないところや不足があれば適切に処置し、改善(Act)します(PDCAサイクル)。これによって、会社の品質管理の仕組みを継続的に改善することができます。
PDCAサイクル
- ISO9001規格の要求事項
表1.ISO9001の要求事項一覧
条項番号 | 要求事項 | |
4.組織の状況 | 4.1 | 組織及びその状況の理解 |
4.2 | 利害関係者のニーズ及び期待の理解 | |
4.3 | 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定 | |
4.4 | 品質マネジメントシステム及びそのプロセス | |
5.リーダーシップ | 5.1 | リーダーシップ及びコミットメント |
5.2 | 品質方針 | |
5.3 | 組織の役割、責任及び権限 | |
6.計画 | 6.1 | リスク及び機会への取組み |
6.2 | 品質目標及びそれを達成するための計画策定 | |
6.3 | 変更の計画 | |
7.支援 | 7.1 | 資源 |
7.2 | 力量 | |
7.3 | 認識 | |
7.4 | コミュニケーション | |
7.5 | 文書化した情報 | |
8.運命 | 8.1 | 運用の計画及び管理 |
8.2 | 製品及びサービスに関する要求事項の決定 | |
8.3 | 製品及びサービスの設計・開発 | |
8.4 | 外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理 | |
8.5 | 製造及びサービス提供 | |
8.6 | 製品及びサービスのリリース | |
8.7 | 不適合なアウトプットの管理 | |
9.パフォーマンス評価 | 9.1 | 監視、測定、分析及び評価 |
9.2 | 内部監査 | |
9.3 | マネジメントレビュー | |
10.改善 | 10.1 | 一般 |
10.2 | 不適合及び是正処置 | |
10.3 | 継続的改善 |
- ISO9001品質マネジメントシステムの構築
ISO9001のシステムは現状からスタートする
それぞれの企業にはこれまで信頼できる製品やサービスをお客様に提供してきた実績があります。しかし、ISO 9001の規格要求をそのまま読み取って、理想的な状態になるように企業文化を無視したシステムを確立しようとすると、実際には実行することができず、結局自分自身を苦しめることになります。ですから、まずは現在会社で行っていることを手順やルールとして明確にし、それを基に不足している部分を補完したり、必要な変更を加えてシステムを確立することが重要です。その後は、システムを運用しながら弱点や改善すべき点を見つけ、継続的に改善を行っていくことが良い結果を生み出します。 - 仕組みは文書化した情報で作られる
ISO 9001によるシステムの構築は、文書化した情報によって行われます。文書化した情報とは、紙媒体だけではなく、電子データや動画など多様な形式があります。ISO 9001の規格に含まれる各要求事項に対して、私たちの会社ではどのように対応するのかを決め、それを必要な範囲で文書化した情報としてまとめていきます。
Ⅲ.継続的改善、顧客満足の向上
ISO9001の真髄は、「システムをレベルアップし顧客満足を勝ち得ているか」にある。
永続する企業は、変革し、継続的に実績を向上させなければなりません。顧客の要求するニーズも停滞せず、常に向上しています。顧客満足を勝ち得るための改善が継続的にできない企業は衰退してしまいます。
顧客の求めるニーズを先取りし、目標を設定し、それを達成していくことが顧客満足の向上であり、永続する企業が目指すところです。
Ⅳ.導入のスケジュール
まず何よりも、経営トップは不退転の決意とリーダーシップを持つ必要があります。忙しさを理由に後回しにしたり、中断すると再開することは非常に困難です。
一般的には、次の図のように、1年程度の活動になりますが、期間は各企業の規模や業務内容、取得活動の程度によって異なります。(ISO9001認証取得活動スケジュールを参照)」
品質マネジメントシステム構築基本プログラム
認証取得活動スケジュール
支援項目 / 活動項目 | 経過月 | |||||||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | |
ISO9001規格要求事項の理解 | ■ | |||||||||||
文書作成(システム構築) | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ■ | ||||||
・品質マニュアル作成 | ■ | ■ | ||||||||||
・規定類の作成 | ■ | ■ | ||||||||||
・業務フローの作成 | ■ | ■ | ||||||||||
・手続書類、帳票の整備、作成 | ■ | ■ | ||||||||||
システムの運用 | ★ | ★ | ★ | ★ | ★ | ★ | ||||||
システムの教育(運用状況チェック) | ■ | ■ | ■ | ■ | ||||||||
・内部監査員養成(2日間) | ■ | |||||||||||
・内部監査実施 | ★ | |||||||||||
・マネジメントレビュー | ★ | |||||||||||
審査対策 | ■ | ■ | ||||||||||
審査後のフォロー | ※ | |||||||||||
■:コンサルタントが指導 ★:貴社が実施 ●:審査対応 | ||||||||||||
申請 | ● | |||||||||||
1st審査 | ● | |||||||||||
2nd審査 | ● | |||||||||||
認証取得 | ● |
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