ISO14001 環境マネジメントシステム
1.はじめに
ISO14001は、企業や組織が環境保護に取り組むために作られた国際規格です。持続可能な開発(現在の世代が将来の世代の利益や要求を損なわずに環境を利用しつつ、要求を満たしていく)の理念を達成しようとするものです。このために、環境、社会、経済のバランスを実現することが不可欠と考えられています。
また、法律の厳格化、環境への負荷の増大、資源の非効率的な使用、不適切な廃棄物管理、気候変動、生態系の劣化、生物多様性の喪失などに対応し、持続可能な開発、透明性および説明責任に対する期待が社会的に高まっています。
このような背景から、組織が環境保護に貢献し、透明性および説明責任を果たすため、環境マネジメントシステムの導入と実施が加速しています。
2.「環境」問題
- 日本経済新聞の記事によると、世界の研究者に「21世紀の科学が解決すべき最も大きな課題は何か?」とのアンケートが行われました。その結果、以下の課題が挙げられました。
(1)環境問題(地球温暖化、環境汚染、砂漠化、環境ホルモン、ごみ問題)
(2)人口増加と食糧問題
(3)エネルギー問題(資源の枯渇、エネルギー源の確保)
また、日本学術会議の「提言‐持続可能な世界の構築のために」(2010年)では、水、食料、エネルギー、資源、環境、リスク、人間の安全保障を、取り組むべき課題として挙げています。 - 「環境」問題は、人口の増加による人間の活動の拡大→それに伴う生産・消費活動の増加→生態系の劣化→人類の生活条件が悪化、という連鎖だと考えられます。
人口: 2050年には、2010年と比べて38%増の96億人になると言われています。
エネルギー消費: 世界のエネルギー使用量は1900年から2000年までの間に20倍になりました。また、2040年には、2011年と比べて50%増えると予想されています。 - 「環境」問題の現象
(1) 公害時代(昭和40年代~50年代)
典型7公害の発生(大気汚染、水質汚染、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭)。これらは主に地域的な現象として捉えられ、法規制や対症療法によって改善されてきました。
(2) 地球規模の環境問題(1980年代以降)
人間の諸活動により、これまで無限だと思われていた自然の浄化力がついに限界を超え、地球規模の環境問題が発生しています。これらの問題は地域的な対症療法では解決できず、法規制にも限界があります。
地球規模の環境問題には、地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨、熱帯林の減少、砂漠化、有害廃棄物の越境移動、海洋汚染、生物多様性の減少、途上国の公害問題などがあります。
3.ISO14001が生まれた背景
1992年の「環境と開発に関するリオ宣言」をきっかけに、持続可能な開発のための国際規格策定の議論がなされ、1996年にISO14001を始めとする環境に関するISO14000シリーズが制定されました。現在、ISO14001はISO9001などの他のマネジメントシステムとの構造的な整合性を考慮した2015年版となっています。
ISO14001とは、企業や組織が環境保護に取り組むためにISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)が定めた「環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引き」のことです。
4.なぜ今ISO14001の認証取得が求められるのでしょうか?
- 競合他社の動き
2021年現在、世界中で約420,000件の認証取得例があり、年率で7%増加しています。特に東アジアと北米では10~14%増加しています。
認証を導入する理由は、以下のようなものがあります。
・環境保護活動に役立つ
・企業のイメージを向上させる(認証を取得することで環境に配慮した企業というイメージが高まる。逆に取得していないと企業イメージに悪影響を与える)
・取引時の優劣(認証を取得していないと入札や採用に不利になる)
・系列からの要求
・コストダウン(資源の有効活用によりコストが低減される) - 消費者(社会)の動き
環境意識の高まり、グリーン購入の動きなど、環境や人間に悪影響を与える企業活動に対して敏感になってきています。 - 行政の動き
地方自治体での認証取得例が増えています。また、入札の際に認証取得を評価項目としている官公庁もあります。
5.ISO14001の内容
- ISO 14001とは?
- (a)国際標準化機構(ISO)が定めた企業や組織の環境保護活動のための管理システムの規格であり、企業や組織が実施すべき要求事項を示しています。
- (b)この規格は、環境の基準値を定めるのではなく、自主管理を支援するシステムです。管理対象は、「ライフサイクルの視点を考慮し、企業・組織が管理できるもの及び影響を及ぼすことができる範囲の活動や製品」とされています。
また、その取り組みは、経済性や技術的な条件も考慮し対処すれば良いとされています。
- ISO 14001の目的は?
- (a)企業や組織が自己責任の原則に基づき、積極的に地球環境の保護に取り組んでいることを証明すること。
- (b)環境への負荷(資源、エネルギーの消費、廃棄・排出物等による負荷など)を低減し、環境保護に役立つ活動を継続的に増進する仕組みを提供すること。
- (c)取引先や消費者、地域社会、公的機関などが企業の環境保護への取り組みを評価する基準となること。
- この規格の対象となる企業、組織は?
ほとんど全ての企業、団体が対象。
製造、建設、サービス、農林水産、研究開発、病院、地方公共団体など。 - この規格の認定はどのようにして行われるか?
日本では、財団法人日本適合性認定協会(JAB)あるいは相互認証を受けた海外組織によって認定を受けた機関が審査を行っています。企業の適合状況(マネジメントシステムの構築と運用状況)を審査し、合格すれば認証を与えます。認証を取得した後も、定期的な維持審査や更新審査が行われます。 - この規格の内容は(実際にすることは)?
要求事項(実施しなければならないこと)をすべて実行することで、以下の要件を含む環境マネジメントシステムが確立されるようになっています。- (a)順守すべき法規制や環境に大きな影響を与える企業の活動、利害関係者(周辺住民や関連する人々)からの要請、マネジメントシステムに対するリスクや機会に基づいて実施すべき項目をリストアップする。
- (b) 経営トップは環境保護に対する責任を明確にし、上記の項目を考慮して方針と目標を定める。
- (c) 目標を達成するための方法を定めて、その運用状況を証拠として記録する。
- (d) 法規制を遵守するための運用手順を整備し、順守状況を監視する。
- (e) 自ら定期的に運用状況(法規制の順守も含む)をチェックする(内部監査を実施する)。。
- (f) 継続的に目標や環境マネジメントシステムを見直す。
Plan(計画)→Do(実行)→Check(点検)→Action(見直し・改善)のPDCAサイクルが取り入れられている。
PDCAサイクル
ISO14001の要求事項
条項番号 | 要求事項 | |
4.組織の状況 | 4.1 | 組織及びその状況の理解 |
4.2 | 利害関係者のニーズ及び期待の理解 | |
4.3 | 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定 | |
4.4 | 環境マネジメントシステム | |
5.リーダーシップ | 5.1 | リーダーシップ及びコミットメント |
5.2 | 環境方針 | |
5.3 | 組織の役割、責任及び権限 | |
6.計画 | 6.1 | リスク及び機会への取組み 6.1.1 一般 6.1.2 環境側面 6.1.3 順守義務 6.1.4 取組みの計画策定 |
6.2 | 環境目標及びそれを達成するための計画策定 6.2.1 環境目標 6.2.1 環境目標を達成するための取組みの計画策定 | |
7.支援 | 7.1 | 資源 |
7.2 | 力量 | |
7.3 | 認識 | |
7.4 | コミュニケーション 7.4.1 一般 7.4.2 内部コミュニケーション 7.4.3 外部コミュニケーション | |
7.5 | 文書化した情報 7.5.1 一般 7.5.2 作成及び更新 7.5.3 文書化した情報の管理 | |
8.運用 | 8.1 | 運用の計画及び管理 |
8.2 | 緊急事態への準備及び対応 | |
9.パフォーマンス評価 | 9.1 | 監視、測定、分析及び評価 9.1.1 一般 9.1.2 順守評価 |
9.2 | 内部監査 9.2.1 一般 9.2.2 内部監査プログラム | |
9.3 | マネジメントレビュー | |
10.改善 | 10.1 | 一般 |
10.2 | 不適合及び是正処置 | |
10.3 | 継続的改善 |
6.認証取得活動の概略
環境マネジメントシステム構築基本プログラム
認証取得活動スケジュール
支援項目 / 活動項目 | 経過月 | ||||||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | |
ISO14001の規格要求事項の理解 | ■ | ||||||||||
組織の状況の理解 | ■ | ||||||||||
初期環境レビュー | ■ | ■ | |||||||||
・環境側面の抽出・環境影響評価 | ■ | ■ | |||||||||
・関連法規のリストアップ | ■ | ■ | |||||||||
環境方針 | ■ | ||||||||||
目標設定、実行計画の策定 | ■ | ||||||||||
文書作成(システム構築) | ■ | ■ | ■ | ■ | |||||||
・環境マニュアルの作成 | ■ | ■ | ■ | ■ | |||||||
・規程類の作成 | ■ | ■ | ■ | ||||||||
・手順書類、帳票の整備、作成 | ■ | ■ | ■ | ||||||||
システムの運用 | ★ | ★ | ★ | ★ | ★ | ★ | |||||
システムの教育(運用状況チェック) | ★ | ★ | ★ | ★ | ★ | ★ | |||||
・内部監査員養成(2日間) | ★ | ||||||||||
・内部監査実施 | ★ | ||||||||||
・マネジメントレビュー | ★ | ||||||||||
審査対策 | ■ | ■ | |||||||||
審査後のフォロー | ■ | ||||||||||
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申請 | ● | ||||||||||
1st審査 | ● | ||||||||||
2nd審査 | ● | ||||||||||
登録 | ● |
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