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BCPコラム 第1回 なぜBCPが必要なのか。

2024年9月20日

災害の多い我が国

毎年の様に、我が国では大きな自然災害が起こっています。風水害については気候変動の影響もあり、台風の強力化、集中豪雨の激化が指摘されています。しかも、災害はいつどこで発生してもおかしくない状況にあります。(表1)

(表1: 近年の主な自然災害)
災害名発生時期主な被害地域(地震)
最大震度
死者・行方不明者建物・全半壊床上浸水激甚災害
大阪市北部を震源とする地震2018年6月大阪6弱65040 
平成30年7月豪雨2018年6-7月西日本他全国各地 27118,1256,982指定
平成30年台風21号2018年9月近畿 14901244指定
平成30年北海道胆振東部地震2018年9月北海道7432,1290指定
令和元年8月の前線に伴う大雨2019年8月九州北部 4985918指定
令和元年房総半島台風2019年9月千葉 95,263125指定
令和元年東日本台風2019年10月静岡関東甲信越東北 10831,3367,524指定
令和2年7月豪雨2020年7月九州 866,1291,652指定
福島県沖を震源とする地震2021年2月宮城、福島6強11,4680 
令和3年7月集中豪雨2021年7月静岡(土石流)神奈川 55278413 
令和4年3月宮城・福島地震2022年3月宮城、福島6強31,3960指定
令和6年能登半島地震2024年1月石川、新潟、富山7412660880指定
(出典:令和6年版防災白書等)

台風や大雨による堤防決壊、土砂崩れなどは発生した地域に多大な影響及を及します。

また、地震はいつどこで発生するか分かりません。しかも今後30年の間で発生する可能性が高いとされる、首都直下地震や南海トラフ巨大地震では、阪神・淡路大震災や、東日本大震災を上回る被害が予想されています。(表2、図1)

(表2:首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生確率と想定マグニチュード)
 今後30年発生確率想定マグニチュード
首都直下地震70%7
南海トラフ巨大地震70-80%8-9
(出典:NHK)
(図1:大地震による被害)

(当社調べ。注:首都直下地震と南海トラフ巨大地震は最大予測。南海トラフ巨大地震の被害総額は、復旧費込み)


加えて、2020年からは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威を振るい、国内でも感染者が拡大して経済にも大きな影響を与えています。
このような状況でも事業を継続ために、企業はどのような対応をしなければならないのでしょうか。

BCP(事業継続計画)について

既にご存知の方も多くおられますが、改めてBCPとは何か、を見てみましょう。(図2)

(図2:BCPの概念図)

BCP(事業継続計画)とは、企業が風水害や地震などの自然災害、新型コロナのような感染症、大火災、更にはサイバーテロ攻撃などの緊急事態に備えて事業を継続させるための計画です。具体的には、ヒト・モノ・金・情報などの資産の利用が制約される、応急業務や業務継続の優先度の高い通常業務(これを非常時優先業務といいます)を特定し、必要な資源の確保・配分や、手続き、指揮命令系統の明確化等を図ります。BCPの策定はの継続や早期復旧を図るために重要です。

BCPが必要な訳

緊急事態が発生して、有効な手を打つことが出来なければ、製品のサービスの提供に著しい支障が発生します。その影響が長引けば顧客離れが起こりかねません。その場合、事業を縮小したり、最悪の場合、廃業に追い込まれたりする恐れがあります。

このようなリスクを回避して、企業の事業を継続させるために、BCPが必要なのです。

防災計画とBCPの違い

BCPと似ているものに防災計画があります。この2つの計画は、目的に違いがあります。
防災計画は、災害を未然防ぎ、従業員の命や、企業の財産を守ることを目的にした計画です。図2の「初動対応」がこれにあたります。
一方、BCPは、緊急事態後の速やかな復旧による事業の継続を目的とした計画です。広義のBCPでは、図2「初動対応」から、非常時優先業務を特定し、対策を立てる「事業継続対応」を経て、「災害復旧」までを含みます。

BCP策定のメリット

BCPを策定することで、以下のメリットが得られます。

  1. 災害発生時の対応力が向上します。
    事前に対策を立てているため、緊急事態発生時に迅速な対応が出来、事業の早期復旧により、被害を限に抑えられます。
  2. 取引先からの信頼が向上します。
    緊急事態でも製品やサービス提供ができれば、取引先の信頼が増し、取引拡大も期待できます。
  3. 自社のコア事業が明確になります。
    BCPを策定する過程で、業務を洗い出して優先付けることで自社のコア事業が明確になり、その後の経営戦略の立案にも役立ちます。

まとめ

  • 我が国では毎年のように自然災害が発生しており、しかもどこで発生してもおかしくありません。
  • BCP(事業継続計画)は、重要業務を継続させ、全体の早期復旧を実現するための計画です。
  • 緊急事態への対応遅れによる事業の縮小や倒産のリスクを回避るため、BCPが必要す。
  • 防災計画は、人命や企業の資産を守る事に重点がおかれ、BCPは事業の継続に重点が置かれます。
  • BCP策定により、災害発生時の対応力が向上し、取引先からの信頼も向上し、自社のコア事業が明確になるメリットがあります。

次回のコラムは、企業のBCP策定状況について考察します。