BCPコラム 第1回 なぜBCPが必要なのか。

災害の多い我が国

毎年の様に、我が国では大きな自然災害が起こっています。風水害については気候変動の影響もあり、台風の強力化、集中豪雨の激化が指摘されています。しかも、災害はいつどこで発生してもおかしくない状況にあります。

 

(表1: 近年の主な自然災害)

災害名 発生時期 主な被害地域 (地震)
最大震度
死者・行方不明者 建物・全半壊 床上浸水 激甚災害
大阪市北部を震源とする地震 2018年6月 大阪 6弱 6 504 0  
平成30年7月豪雨 2018年6-7月 西日本他全国各地   271 18,125 6,982 指定
平成30年台風21号 2018年9月 近畿   14 901 244 指定
平成30年北海道胆振東部地震 2018年9月 北海道 7 43 2,129 0 指定
令和元年8月の前線に伴う大雨 2019年8月 九州北部   4 985 918 指定
令和元年房総半島台風 2019年9月 千葉   9 5,263 125 指定
令和元年東日本台風 2019年10月 静岡関東甲信越東北   108 31,336 7,524 指定
令和2年7月豪雨 2020年7月 九州   86 6,129 1,652 指定
福島県沖を震源とする地震 2021年2月 宮城、福島 6強 1 1,468 0  
令和3年7月集中豪雨 2021年7月 静岡(土石流)神奈川   55 278 413  
令和4年3月宮城・福島地震 2022年3月 宮城、福島 6強 3 1,396 0 指定

(出典:令和3年版防災白書等)

 

台風や大雨による堤防決壊、土砂崩れなどは発生した地域に多大な影響及を及します。

また、地震はいつどこで発生するか分かりません。しかも今後30年の間で発生する可能性が高いとされる、首都直下地震や南海トラフ巨大地震では、阪神・淡路大震災や、東日本大震災を上回る被害が予想されています。

 

(表2:首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生確率と想定マグニチュード)

  今後30年発生確率 想定マグニチュード
首都直下地震 70% 7
南海トラフ巨大地震 70-80% 8-9

(出典:NHK)

 

(図1:大地震による被害)

図1:大地震による被害

(当社調べ。注:首都直下地震と南海トラフ巨大地震は最大予測。南海トラフ巨大地震の被害総額は、復旧費込み)

 

加えて、2020年からは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威を振るい、国内でも感染者が拡大して経済にも大きな影響を与えています。

このような状況でも事業を継続ために、企業はどのような対応をしなければならないのでしょうか。

 

BCP(事業継続計画)について

既にご存知の方も多くおられますが、改めてBCPとは何か、を見てみましょう。

(図2:BCPの概念図)

図2:BCPの概念図

BCP(事業継続計画)とは、企業が風水害や地震などの自然災害、新型コロナのような感染症、大火災、更にはサイバーテロ攻撃などの緊急事態が発生し、ヒト・モノ・金・情報などの資産の利用が制約される場合に、応急業務や業務継続の優先度の高い通常業務(これを非常時優先業務といいます)を特定し、非常時優先業務の継続に必要な資源の確保・配分や、そのための手続き、指揮命令系統の明確化等を図ることで、適切に業務が執行できるようにするための計画のことです。

BCPが必要な訳

緊急事態が発生して、有効な手を打つことがきでなければ、製品のサービスの提供に著しい支障が発生します。その影響が長引けば顧客離れが起こりかねません。そのような場合、特に中小企業は経営基盤の脆弱なため、事業を縮小し従業員を解雇しなければならなくなったり、最悪の場合、廃業に追い込まれる恐れがあります。

このようなリスクを回避して、企業の事業を継続させるために、BCPが必要なのです。

防災計画とBCPの違い

BCPと似ているものに防災計画があります。この2つの計画は、目的に違いがあります。
防災計画は、災害等の緊急事態に際して、従業員の命や、企業の財産を守ることを目的にしています。図2の「初動対応」がこれにあたります。
一方、BCPは、事業の継続に重点を置いた計画です。広義のBCPでは、図2「初動対応」から、「事業継続対応」を経て、「災害復旧」までを含みます。

BCP策定のメリット

BCPを策定することで、以下のメリットが得られます。

  1. 災害発生時の対応力が向上します。
    緊急事態発生時に適切な対応が出来、事業の早期復旧により、被害を小さく抑えられます。
  2. 取引先からの信頼が向上します。
    緊急事態でも製品やサービス提供ができれば、取引先の信頼が増し、取引拡大も期待できます。
  3. 自社のコア事業が明確になります。
    BCPを策定する過程で、業務を洗い出して優先付けることで自社のコア事業が明確になり、その後の経営戦略の立案にも役立ちます。

まとめ

  • 我が国では毎年のように自然災害が発生しており、しかもどこで発生してもおかしくありません。
  • BCP(事業継続計画)は、自然災害などの緊急事態でも重要業務を継続させ、全体の早期復旧を実現
    するための手続きや指揮命令系統を明確にしておき、適切に業務を執行するための計画です。
  • 緊急事態への対応遅れによる事業の縮小や倒産のリスクを回避して、事業を継続させるため、BCPが必要になります。
  • 防災計画は、人命や企業の資産を守る事に重点がおかれ、BCPは事業の継続に重点が置かれます。
  • BCP策定により、災害発生時の対応力が向上し、取引先からの信頼も向上し、自社のコア事業が明確になる、といったメリットが享受できます。

次回のコラムは、企業のBCP策定状況について考察します。

無料見積もりはこちらまで